概念と実在
ふと気付いてみれば、とても当たり前のことでしかなかった。
自分が「組織」をどのように捉え、整理し、手を加えているか。その過程をもっとうまく説明したい。そのための試行錯誤をずいぶん長く続けてきた。抽象化してフレームワークに落とし込むのは好きで得意な領域なので、あれこれ試作品を作ってきた。
ただ、その中でいつも困っていた。
「人」をどう扱うか、について。
自分が当事者として組織の中にいるときは、抽象化した「組織」に向き合っているモードもある。それに加え、目の前にいる人が「本当は何を感じてるのか?」に深く耳をすませようとするモードもある。
「フレームワーク」として抽象化することと、「目の前の人」に向き合うことは、明確に異なるモードであり、同時に、決して相容れない。これがずっと悩みの種だった。
北軽井沢に4泊5日も籠もる機会をもらい、そこで得た結論は至ってシンプルだ。
「概念」としての組織。
「実在」する「人の集団」としての組織。
組織にはこの二重性がある。それをすべての前提とする。さらに組織づくりという営みは、この二重性を動的に併用し続けることでもある。
ちなみにこの着想の大元をたどると、ホキ美術館で目にした藤田貴也氏の写実絵画だった。
令三社/山田裕嗣
リサーチ
Gaudiy:「プロトコル」に基づく持続的な組織のアップデート
IT系の企業、特にエンジニア出身の経営者の場合、プロダクトづくりの発想で「組織」を扱うことがある。その中でも、2018年創業のスタートアップ Gaudiy は「プロトコル」に基づく組織運営を実践することで、この考え方をさらに徹底して推し進めている。それは組織づくりに関する思想でもあり、同時に、事業を通じて作り出したい世界観の表現でもある。
記事・イベント
【3/13木】ヌーラボの新規事業創出プログラム「Nu Source(ヌーソース)」始動記念講演会@博多
ヌーラボの新規事業創出プログラム「Nu Source」の始動の記念講演会。香港を拠点に活動する起業家・投資家のTak Lo氏、ロンドンでスタートアップを支援しているTony Hughes 氏。また国内からはエフェクチュエーション研究の第一人者である吉田満梨氏や、『すべては1人から始まる』の翻訳者であり新しい組織運営の研究をしている山田裕嗣氏をお招きします。
【3/16日@東京】『すべては1人から始まる』著者トム・ニクソン来日記念特別セミナー
『すべては1人から始まる』の著者の来日に合わせた特別イベントシリーズが開催。東京での開催では、「2022年にトム・ニクソン氏が来日した際、ソース原理について深く学んだ方はその後どのような旅路を歩んだのか?」について扱われます。
【3/25火@東京】Our Messy Journey 〜 僕たちの「でこぼこ」ジャーニー Vol.2
先進的な組織運営に挑戦する人の「生々しい話」を掘り下げるイベントシリーズ。
2回目はホラクラシーの実践者であり、その実践支援SaaSとしてトップクラスのシェア(たぶん)を誇るHolaspiritの創業者、フィリップへのインタビューです。
コンテンツ
vol.21 イノベーションに不可欠な「ナイキスト効果」が生まれる環境とは?
「イノベーションと聴く」をテーマに、対話しながら講演で話すことを組み立ててみようという試み、第2弾は、イノベーションが生まれるのに不可欠な環境とは何か、について。「問いが大事」という話をしながら「でも、じゃあ良い問いを教えてください、みたいになっちゃうのは違うでしょう?」と日頃思っている篠田さんが、途中で急に思い出したのは、イノベーションを連発していたアメリカのベル研究所の「ナイキスト効果」のお話でした。
書籍
『デリダ 脱構築と正義』(講談社学術文庫)
なかなか理解が進まない。腰を据えて読む機会の少なさという言い訳もあるが、それ以上に、土台となる教養の足りてなさが悔やまれる。深く理解できることも、きっとない。
それでもデリダを手に取りたかったのは、組織づくりをするうえで、「未来に開かれた可能性」に常に目を向けることが重要だと感じるからだ。概念としての「組織」にとっても、実在する「個人」にとっても、常に変化する前提を問い続け、その上で新たな行為を重ね続けること、その先に「希望」があると信じられること。
直観的な仮定の足腰を少しでも強くする上では、これまでの自分の範疇を超えた領域に踏み出す必要がありそうだ。