「組織づくり」のプロセス
理論を学び、事例に触れる。2017年から始めた足掛け8年以上にわたる探究は、大別すればこの2つだ。
この探究を通じて、組織の捉え方を大きく変えることができた。ただし、この理論と事例を持ってさえいれば、「良い組織」をつくれたのだろうか?半分はYesで、半分はNoだ。
理論も事例も、知らないよりも、知っている方が良いことは間違いない。考えられる視点が広がり、実践できる選択肢も増える。しかし、決してそれ以上ではない。どれほど優れた理論も、秀逸に考え尽くされた実践事例も、自分の目の前にある現実に対する「正解」は決して教えてくれない。すべての人が違うように、すべての組織も違う。
「今の事業内容」「今のメンバー」「今の株主構成」「今の市場環境」「今の組織文化」を目の前に、どのように「この組織」を良くすればよいのか?当事者として向き合うべきは、自分たちならではの「個別解」を作ることだ。
ここの解像度を高めるべく取り組んでいるのは、「組織づくり」というプロセスに目を向けることだ。その過程の「ワザ」の再現性を高めることが、良い組織が増える過程で重要になるのではないか。
令三社/山田裕嗣
リサーチ
How to get started with transitioning to a self-managing organisation
Lisa Gillによる「セルフマネジメント型組織の始め方」に関する記事。世界中の実践者・有識者どちらともつながりのある彼女らしく、とても現実的な提案。個人的にはMiki Kashtanの提案する5つの組織のシステム(意思決定、情報の流れ、リソースの流れ、フィードバック、コンフリクト対応)は「わかる」ものの、もう少しスコープを広げて組織を捉えたいなと思った
Self-Management in Action: How a Dutch Team Is Leading Humanitarian Aid in Ukraine
オランダにおいて、ウクライナ支援のボランティア組織における自律的な組織運営が紹介される。こうした状況だからこそ有効に機能する分散型の組織運営の知恵は活かしうる。東日本大震災のあとに立ち上がった「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を思い出した(この本に詳しい)
記事・イベント
【6/26スタート】マネーワーク本講座 〜CU*money_JAPAN 第1期〜
ソース原理に関連して、文章だけではどうしても咀嚼が難しいマネーワーク。ここの体感を得ると、「ソースとしての創造性の発揮」がどういうことか、身体的に捉えられるようになってくる。これを秀逸なオンライン講座として、初めて日本語になって届けられる。
【7/26】ソース原理と空海
多摩美術大学大学院にて安藤礼二教授に師事し、空海を研究する渡邊和樹さんのお誘いで、「ソース原理×空海」を語るイベントに出ることになりました。場所は目黒の高福院。簡単な話題提供から始まり、参加者を交えたディスカッションの時間を多く取る予定です。
書籍
『組織の思想史』
1938年の『経営者の役割』(C.I.バーナード)に始まり、約10年ごとに出版された組織論の重要文献5冊について、順を追って縦断的に解説してくれる一冊。詳しい変遷は本書に譲るとして、個人的に印象に残ったのは「組織」という言葉の持つ輪郭の曖昧さだ。それは、時代を下るとともに変化もしていそうだ(厳密に定義できるものではないが)。
実務的な当事者として「目の前の組織」に変化を促そうとするときに、「組織の定義はどう変わってきたのか?」という問いにはほとんど意味がない。取り組むべきはもっと具体的な課題だ。一方で、長い時間軸を想定し、「組織をつくる」という知恵の集積がどのように変化するかを考えるには、こうした根本的な概念の変化が重要になる。