探究・実践・発信・実践共同体
2025年10月1日より、令三社は5期目を迎える。今期からの取り組みを記事にした。
こうして振り返りと展望を書くのは4回目だ。毎回、「変わっていないこと」「思ったより進んでいたこと」「想定外に起こったこと」の確認作業であり、それらを時系列に沿って位置づけながら「新たな解釈」をするプロセスでもある。
今回の記事で輪郭がはっきりしたのは「実践共同体」の捉え方だ。年始の記事においても「リアルな場を持つ」「メディアを作る」という2つのテーマを置いたが、一つ視点を上げれば、同じ現象を違う切り口から取っていただけでもある。
「個人の実践」が促されること、「”系”全体としての知恵・知見」が創造されること。一見すると繋がらない(むしろ相反する)ように見える「個と全体」の関係だが、この両輪があることに意味と面白さがある。
自分で本当に実践してきた人には、その経験からしか語れない言葉があり、発せられない問いがある。それを聞いた側も、その実践の厚みと重みを感じてこそ応答できる言葉がある。そして、そのやり取りに加えられてこそ、学術的な知見や観点が活かされる道も新たに見えてくる。
「実践共同体」の具体的な形はまだ見えていない。少なくとも、日本と世界の境界を溶け合わせながら、色々な人が関われる場と機会が作られるはずだ。
令三社/山田裕嗣
リサーチ
寺田本家:自然とともにある酒造り
350年の歴史を持つ千葉の酒蔵。お酒を作るのは「微生物の仕事」であり、人はその自然な営みを支える・助ける役割として寄り添う。そういった姿勢は、酒造りだけでなく、自然との関わり、地域との関わりなどにもそのまま表れていた。
日本の経営実践を世界へ - 静岡文化芸術大学・曽根教授との対話から -
「長寿企業」について、ファミリービジネス研究の第一人者である曽根先生とお話させていただいた。老舗企業の存続メカニズムや日本と海外の経営文化の違いなど、多岐にわたる論点が交わされる時間となった。
記事・イベント
コンテンツ
ソース原理 Ep.4 新規事業はどう生まれるか?〜ソース原理とエフェクチュエーションの交差点
ソース原理に関して様々な実践者・有識者と対談する音声コンテンツシリーズ。今回はエフェクチュエーションとソース原理の交点について、神戸大学の吉田先生と対談させていただいた。
書籍
『精神の生態学へ』(グレゴリー・ベイトソン)
中巻の冒頭、1941年に文化人類学者のマーガレット・ミードが行った発表に関する言及から始まる。
「われわれの目的を達成するには目的を捨てるのが一番だ」と聞こえる彼女の提言は、まるで倫理学や哲学の逆説命題のようだし、キリスト教かタオイズムの教えのようでもある。
彼女の論旨は、手段と目的そのものを直接的に批判するものではない。目的が手段を正当化するともしないとも彼女は言っていない。そういう直接的なレベルではなく、われわれが方法と手段一般について考える際の傾向について、そしてわれわれの思考習慣に内在する危険性について語っているのである。
「メッセージ内容」と「メタなメッセージ」を分けて捉えるダブルバインドも、学習の階層的な整理も、「どのような構造として捉えるか」をベイトソンは扱っていると言える。
「組織」と「組織づくり」を分けて扱おうとする営みも、こうした「堅牢な枠組みの整理」を前提として実現するのではないか、と思いながら読み進めている。

