自律型組織の成立要件
先日リトアニアの大学(KTU)に訪問した際に、准教授のJolitaと「自律型組織が成果につながる、ってどうすれば実証できるのか?」という話になった。チャンクを分けると、「自律型組織の定義」「プロセスの捉え方」「成果の測り方」の3つくらいがありそうで、全部やるには10年がかりかもしれない、とも。
そもそも自律型組織とはどう定義するのか?学術的にはLee & Edmondson(2017)の論文において、SMO (Self-Managing Organizations)を「組織全体に形式的・体系的に権限を根本的に分権化した組織」と定義したものがよく参照されるようだ。
これは「定義」のスタートとしては理解できる。
そのうえで、実務家的な視点にたてば、どんな要件があれば成立するのか?
現時点の仮説は、以下の3つのレイヤーにおける「共通認識」を持つことだ。
目的レイヤー:この組織は何のために存在するか?
価値観レイヤー:何を大切にし、どう振る舞うか?
ガバナンスレイヤー:何がどのように正当化されるか?
「目的」「価値観」は、まぁそうだろう。これは前提だ。そのうえで、焦点を当てるべきと感じるのは「ガバナンス」のレイヤーである。
平たく言い直すと「どうすれば『決まった』と合意できるか」が揃っていることである。これは「私が決まったと思う」では足りず、「『みんなが』決まったと思う、と私も思う」という二階建ての信念として形成される必要がある。
ピラミッド型の組織であれば「経営会議で決まった」と言われ、オーナー企業であれば「社長が言ってた」と言われれば、「公式な決定事項」として受け取れるだろう(内容への賛否はともかく)。
自律型組織となったときに、この「意思決定の正当性」に対する共通認識が揃わないと、組織運営が極めて非効率になり、そして属人化する。
ここのガバナンス構造を設計し、必要なトレーニングをメンバーに提供することで、自律型組織の成功確率はずいぶんと高くなる。
令三社/山田裕嗣
リサーチ
「ZeroDX Awards 2026」応募企業募集開始
運営事務局を務める「人単合一リサーチセンター」として、年1回開催されるアワード(ZeroDXアワード)の募集を開始しました。昨年は26ヶ国95社(たしか)の応募があり、このアワードに現地参加すると各国の実践企業と直接話すこともできる貴重な機会です。ご関心がある方がいればぜひお気軽にご相談下さい。
上司不在・肩書なし・階層なし。トマト加工企業における自律型組織の実践
600人のトマト加工企業においてセルフマネジメント実践する、アメリカのモーニングスター。『ティール組織』にも取り上げられる事例であり、30年近くを掛けて培ってきた実践について、創業期から携わるダグ・カークパトリック氏が丁寧に答えている。
記事・イベント
会社は誰のものか:働くことと「所有」をめぐるいくつかの答え
ドイツで「スチュワード・オーナーシップ」、スペインで「企業買収→組織変革」という2つの異なる「所有権」に関する視察について、コクヨのオウンドメディア「WORKSIGHT」に取り上げていただきました。
書籍
『モノづくりの現場から見えてきた“争わない社会”』(前川正雄)
前川製作所という会社がある。1924年創業の産業用冷凍庫などを製造するメーカーだ。東京の下町で始まった職人集団だ。
ここ最近ではあまりメディアなどに登場しないが、2000年前後には野中郁次郎氏、清水博氏などと共著があり、「場所」に基づく経営として両教授とともに探求を深められている。その延長で今西錦司氏の「棲み分け理論」なども探求されていた。
本書は、こうした「場所的経営」を実践されていた当時の社長、前川正雄氏が2026年2月に上梓したものだ。「場所」を単位に経営を捉えるとはどういうことか?またそれが西洋的な思想哲学とどのように違うのか?西田哲学も参照しながら、前川製作所という「職人集団」の現場を通じて得た実感にもとづいて書かれている。
今西錦司氏の「棲み分け理論」を読むと、彼は生物社会は「生物全体社会」「種社会」「種個体」という3階層で捉えている。この中で難しいのが「種社会」だ。これは1つ1つの種個体の集合体だが、今西氏は自身の経験から「それは明確な主体性を持って実在する」と説く(これがなかなか理解されない、と本人も書いているが)。それは今西氏が幼少期から京都の山に遊び、たくさんの観察を重ねた上での身体的な実感だ。
前川氏の書籍を読んでいて、おそらく、同じことが起きているのだろう、と思った。製造業の現場に関わり続けてきた前川氏には、職人と顧客の混ざった「場所」というものが、数々の経験を元に明確に知覚されていたのだろう。




