会社の「所有」の問い直し
Anthoropicの共同創業者の兄妹の出演するPodcastを聞いた。
CEOのDario Amodeiは研究担当VP、社長であるDaniela Amodeiは安全性・政策担当VPをそれぞれOpenAIで務めていた。2021年、安全性に対する考え方の違いから袂を分かった数名とともに、Anthoropicを創業している。
このPodcastの中で、特に安全性担当であるDanielaは「AnthoropicはPublic Benefit Corporation(PBC)として運営されている」と何度も強調していた。
PBCは「アメリカの企業形態のひとつで、公共利益を重視し、社会貢献を目的に置いた法人格」である(※出典はこちら)。私なりの理解で言えば、過度に株主利益に傾いた株式会社へのカウンターとして、社会善を経営の意思決定にも反映するための仕組みだ。ちなみにAnthoropicはPBCだけではなく、Long-Term Benefit Trust(LTBT)という独自機関も別に設け、取締役の過半数を選任できる仕組みになっている。
Anthoropicがガバナンス構造にこだわるのは、AGIという技術が「経済的な理由」によって社会悪となる用法に陥るのを避けるためである。ただ、こうした新たなガバナンスは社会的に蓄積された知見が少ないため、Anthoropicも試行錯誤をし続けている、とも語っていた(2024年のOpenAIのSam Altmanの解任騒動も彼らの特殊なガバナンス構造によって起きたものでもあった)
***
会社の【所有】の構造をどのように考え直すか?先日のドイツで訪問したスチュワード・オーナーシップも、スペインで企業買収→組織変革を進めるKRISOSも、2022年に日本で法制化された労働者協同組合も、根底の問題意識や目指すことは異なるが、突き詰めればいずれもこの問いに収斂する。
これらのパターンに関して、「何を守りたいのか」によって、適している選択肢も変わる。Claudeとまとめたのは以下の6つだ。
創業者ミッションの希釈:目的と利益の両立を法的に守る
世代を超えた事業継承:会社の永続性・独立性を守る
資本と労働の不対称:労働者の自己決定・分配を守る
コモンズの私有化:公共財・共有資源を守る
生態系・気候:自然と未来世代を守る
実存的リスク:人類全体への受託責任
抽象的に「どんなパターンがあり得るか」と考えることと、具体的に「自社に合った実践の個別解はなにか」に落とし込むこと。特に「所有」に関しては、基本的に後戻りが非常に難しい分だけ、慎重に検討が必要になる。
まずはスチュワード・オーナーシップを中心に、実践企業数社とともに、「自社でどうするか」を考え始めている。いずれ折を見て、そこでの具体的な成果も世に出せるはずだ。
令三社/山田裕嗣
リサーチ
47代続く旅館に学ぶ、スチュワードシップの哲学
養老二年(718年)に開業。現在の当主(47代目)に至るまで、同族で経営を担い続ける。日本最古の温泉と言われる石川県の法師旅館に、アメリカ人のEricと同行させてもらった。
Ericはアメリカ東海岸のロングタームで投資するPEファンドで働きながら、「本当に長く続く企業とは?」を調べるために世界中の超長寿企業を訪ね歩いている。来年には書籍化される予定だ。
記事・イベント
【6/25木】inquiring futures #2「自律する組織を問い直す」
inquireが主催するイベントに呼んで頂き、「自律する組織」について、ツクルバの共同創業者でもあるウィルネクストの中村さんとお話する機会を頂きます。
改めて、自律する組織とは、そもそもどのような営みなのか。誰のための、何のためのものなのか。どのように構築し、どのように運営していくものなのか。答えのカタログから選び取るのではなく、自分の言葉で輪郭を引き直していくこと。今回は、その問い直しの時間を持ちたいと思います。
このイベントページの文章にあるように、決して「知っていること」のダウンローディングをするのではなく、会場で一緒に「今なにを問うべきか」自体を考えられたら良いなと思います。
「ZeroDX Awards 2026」応募企業募集開始のお知らせ
ハイアール社が主催し、世界中から自律型組織をノミネートする年1回のアワード。日本企業からの応募を引き続き募っています。
以下のような方向性に共感する組織の方は、ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。
【現場の自律性】社員やチームに意思決定権がある
【ユーザー価値を重視】単発取引ではなく継続的な体験を重視
【共創・エコシステム型】パートナーやユーザーとの共創
【社員を価値創造主体とする】起業家精神・自律性を重視
【価値連動の利益配分】成果とインセンティブの連動
【デジタル活用】AI・デジタルを価値創造に活用
【組織学習】学習・変化・自己進化できる組織
書籍
『西田幾多郎の哲学』(小坂国継)
西田幾多郎、和辻哲郎、道元、世阿弥、中根千枝、野中郁次郎、木村敏。先日Claudeと壁打ちをしていて出てきた名前だ。
英語圏で自律型組織が語られるときに「Roleで仕事を分ける」というのが極めてスタンダードな分業の方法とされる。そこに疑念が挟まれるのを見たことがない。それが1つの成功パターンであることは確かだし、日本で見事に成功している実践例も目にしてきた。
一方で、「ジョブ型」がいつまで経っても主流にならないように、「Roleによる分業」は日本に根付いている働き方とは違うのではないか?そのあたりを考え始めると、個人的な好みもあり、どうしても「日本的」な世界観や自己観を辿りたくなる。手始めに久しぶりに手に取ったのが、Claudeが筆頭にも挙げた西田。





